共益費のかたち

1. 共益費の定義

本日は共益費についてそこそこ深堀りしてみます。

建物の賃貸借契約による賃料(いわゆる家賃)は、一般的に家賃+共益費若しくは管理費から構成されるのが、一般的かと思います。

 さて、この時の共益費は一体どのような費用なのでしょうか?

不動産公正取引協議会連合会作成の『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則』によれば、共益費は借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用を言うと規定されております。

 なお、管理費はマンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課を含み、修繕積立金を含まないと規定されております。

賃貸借契約においては、名称は峻別を明確にしたほうがよさそうですね。

 また、不動産鑑定評価基準(不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うにあたり法律ではないもののこれに準拠すべきもの)においての共益費については、賃料を求める場合の一般的留意事項・実質賃料と支払賃料の項で

なお、慣行上、建物およびその敷地の一部の賃貸借に当たって、水道光熱費、清掃・衛生費、冷暖房費等がいわゆる付加使用料、共益費等の名目で支払われている場合もあるが、これらのうちには実質的に賃料に相当する部分が含まれている場合があることに留意する必要がある。

不動産公正取引協議会連合会 『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則

とされております。筆者の記憶では、以前は上記の費用(付加使用料、共益費)は、全額共用部分の維持管理に要する費用であることから通り抜け費用とみなし、収入も支出も計上しないという考え方もあったような気もしますが、ちょっと強引な気もします。共益費収入を収入として計上するのが、より正確と考えます。

収益還元法の適用にあたっての項目としては、運営収益の一項目として、挙げられており、

「共益費収入」は対象不動産の維持管理・運営において経常的に要する費用(電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源に要する費用を含む)のうち、共用部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入と規定されております。

参考までに貸室部分に係る電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用は「水道光熱費収入」として運営収益として計上。同様に貸室部分の支払いに関しては「水道光熱費」として運営費用の一項目として計上することになります。

上記の共益費収入は、収益還元法を適用するにあたり、賃料収益とともに共益費収入を運営収益として計上することになります。

2. 共益費運用の実際

ネット情報を見た所、UR賃貸住宅の場合は、毎年一回、共益費の収入と支出を記した文書を作成し、入居者に報告しているとの事です。共用部分の維持管理のために共益費として徴収している以上、透明性を確保しているということでしょう。また、共益費の名目のもとにその一部を家賃に充当しているわけではないとの証左ともいえます。公共性の高い賃貸住宅事業ならではと思います。が、民間の賃貸住宅の場合は、共益費の年間収支を、賃借人に開示する義務は寡聞にして聞いたことはございません。(私の知る限りはですよ)

なので、アパートのレントロールだと

部屋番号   賃料    共益費

101号室  75,000円   5,000円

102号室  79,000円    なし 

103号室  78,000円   2,000円

こんな感じの賃料一覧表になってる事もあるかと思います。賃借人募集に何かとご苦労されたあとも垣間見られます。

 事務所の場合の共益費の決め方は、面積当たりの単価を初めに算出、賃料もまた単価を初めに算出して後賃貸面積を乗じて総額を算出することになります。共用部分を利用する割合は、賃貸面積の大きさに比例するとの考え方が、当事者の合理的意思に合致するであろうと思います。賃料と共益費の割合は賃料12,000円/坪に対して共益費3,000円/坪ぐらいがよく見られたように思います。賃料100に対して共益費25のイメージです。

余談にはなりますが、以前の上司に聞いた話では、不良債権処理の銀行担保物件が巷に溢れていたころ、競売物件(賃料差し押さえ中)の物件はなんと 

月額賃料 6,000円/坪 月額共益費 6,000円/坪

と賃料と共益費の割合が50:50の物件が見られたとの事。賃料は差し押さえされると債務者(この場合は物件所有者かつ賃貸人)が授受できないため、差押え逃れで本来賃料とする部分を共益費にしていたのではないかとの事でした。

 また、入居者募集のインセンティブを上げるために、フリーレント(賃料を一定期間免除する事)を1ヶ月か2ヶ月付与する施策があります。この場合は、大抵賃料を免除する事はあっても、共益費は普通に徴収することが多いようです。個別の契約書をご確認いただいたほうがよろしいかと思います。

3. 共益費の算定

そういえば、貸室賃貸借契約書において賃料の増加減についての条項の規定は、一般的に規定してあり、「…賃貸人賃借人が協議の上改定する。」との文言が、普通借家契約の賃貸借契約書に、記載あるのがよく見られると思います。

共益費の増加減についての規定は、賃料とは別途の条文で規定される事が多いと思われます。適正な賃料(新規賃料、継続賃料)を鑑定評価する手法とその背景は、不動産鑑定評価基準に規定されておりますが、共益費の算定については、現時点では心もとないというのが現状です。

<了>